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研究者であることと職業:サーファー物理学者の記事を読んで
「サーファー物理学者」についての記事を読んだ。
たんなる「サーフィンが趣味の物理学者」のことではない。Garret Lisi氏は大学や研究所などのいわゆる『研究機関』に所属せず、旅行ガイドや建設現場作業で生計を立てているという。 「自由」を最重要な価値とするサーファーのライフスタイルとしては、珍しいものではないかもしれない。しかし、そういう人が物理学研究で世界的に著名であるということに驚いた。 なぜ驚いたかといえば、2つある。 1. 物理の研究って、設備とか材料とかたくさん使うだろうに、フリーの物理学者ってありえるのか? 2. 旅行ガイドして建設作業現場で働いて、さらにサーフィンとスノボしてたら、研究のための時間ってどれくらいとれるんだ? 概念としては、「研究で食っている」ってのと、「研究者である」ってのはイクォールではないはずだから、サーファー的ライフスタイルをもつ物理学者がいたって矛盾はない。しかし、私には「研究者として大成するためには研究ばっかりしてなくちゃならない」というpresumptionがある。上の2つの疑問はそれと関係している。 精神論でなくって、実際に研究というのは時間と手間と金を使うものだから。 世界的な雑誌に投稿できるような研究者の9割はストイックに研究している人たちだし、それどころかそうやっていたって芽が出ない人も山ほどだ。だから、概念としてはどうであっても、「研究者である」nearly=「研究で食ってる」にならざるを得ないのが、現実ってもの。 たしかに職業でなく趣味で研究をしている人も少なからずいるけど、それはいわゆる「アマチュア」研究者というやつで、ほとんど全ての場合、国際的雑誌に単著や主著を投稿できるレヴェルではない。 だからやっぱり、凡人にとっては「研究者」=「研究で食ってく」なわけで、その「=」を外しても研究者として一線に立っているLisi氏ってのは、それはそれはすごい天才なのだ。私は、彼の発見がどれだけ天才的かは理解しきれないが、彼が「=」を外しても研究者であるという点に、本当に驚いた&感心した。世間一般だって、そういうことはだいたい分かっているから、例外中の例外みたいなLisi氏のことが記事として特に採りあげられるのだろう。 もっとも、理論研究なら考えることがメーンだから、他のことをやりながらでもできるのかもしれない(あと、優秀なコンピュータを時々使わせてもらえれば)。が、それを抜きにしたって、うむ、すごいもんはすごい。ずばぬけた才能や適性のある人というのはやっぱり何千人かに一人くらいはいるものらしい。アンビリーバボーだ。 その才能については単純に「うらやましい」と思う。私だってそのくらい才能があれば、「チャリダー研究者」くらいなってみたい。JCFエリート級だけど"American Naturalist"の単著も持ってます、みたいな(うわ、片方だけでも無理っぽい)。当然ながら、自分はそのような才能も適性もない大多数のうちの一人である。もっと頑張らねばならんのだろう。うむ。 しかし、ずばぬけた才能を何に使うかという選択で、物理学を選ぶというのはやはりそれが好きだからだろうな。サーフィンやスノボと同じように物理が好きっていうのは、なかなか私には想像しがたいが…まぁ、好みは色々だよな…。 BGM "Lv 30" by くるり
by namisuke.pierre
| 2007-11-26 03:38
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